院長の太郎です。
最近注目されている幹細胞上清です。
幹細胞上清に含まれるのはサイトカインや細胞小器官ですが、幹細胞が近隣の細胞に働きかけるときにこれらの物質が作用していることがわかっています。
幹細胞を注射しなくても効果が出るのは、幹細胞上清のこれらの物質が豊富に含まれているからです。
様々な研究から
幹細胞上清が傷の修復(創傷治癒といいます)や傷ついた神経細胞の修復を早めることがわかっていましたが、今回は骨折を早く改善するデータがありましたので紹介いたします。
Exosomes from bone marrow mesenchymal stem cells enhance fracture healing through the promotion of osteogenesis and angiogenesis in a rat model of nonunion.
こちらの論文は2020.01月のものですが、骨髄系間葉幹細胞由来の細胞小器官であるエクソソームの効果を見ています。
骨折したマウスの骨折部に注射することで、骨再生と血管新生効果が高まって治癒が早まることが認められました。
Exosomes from human umbilical cord mesenchymal stem cells enhance fracture healing through HIF-1α-mediated promotion of angiogenesis in a rat model of stabilized fracture.
こちらは2019.03月の論文ですが、こちらは臍帯間葉幹細胞由来のエクソソームが同じく、ラットの骨折部に入れることで骨再生と血管新生を早める結果が出ていました。
これらの論文ではラットの骨折部位に直接投与していました。ただし幹細胞上清やエクソソームを直接骨折部位に注射することは感染のリスクがあるために実際には投与方法は静脈注射などが行われるようになるのではないかと思います。
全身に効果を発揮することがメリットですが、骨折治療として考えると静脈に入れる場合はある程度量が必要になるかもしれないのがデメリットです。