マイコプラズマ・ジェニタリウム??尿道炎は淋菌クラミジアだけではないのです・・

2019/12/21

院長の太郎です。

2019年11月30日の日本製機能学会導入講義、いよいよマイコプラズマ・ジェニタリウムまで来ました。
最近性感染症を治療している泌尿器科医の間では一般的になっていますが、他の科のドクターではまだあまり聞いたことのない先生もいるかも知れません。マイコプラズマといえば一般的には肺炎ですね。
以前からセックスで感染した急性尿道炎のとき、淋菌でもクラミジアでもないものがいることはわかっていました。しかし多くは重症化しない、もしくは上記のメジャーな原因菌を治療する薬を使ったときに治っていたのであまり重視されていなかった印象です。最近は抗菌薬に耐性がついてきて、問題になってきています。

以下は学んできたことのまとめです。

マイコプラズマ・ジェニタリウムMycoplasma genitalium
1981年に発見されました。
クラミジアでも淋菌でもない尿道炎で、検査では炎症反応があって、テトラサイクリンやマクロライド系の抗菌薬を使うと治る??
抗菌薬が効いているということは微生物が原因なのか?というところから調べられ、発見されることになりました。
マイコプラズマとは、自己増殖可能な最小生物です。
2008年、人が遺伝子を組み合わせることで作り出すことのできた最初の細菌でもあるようです。知りませんでした笑

男性尿道炎の原因微生物で、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では女性の尿道炎の原因としては可能性、としか触れていませんが、実際には原因になるそうです。

まだ日本では検査、治療とも自費ですね。

世界的には検出試薬はたくさんあるそうですが、日本では2つだけです。

尿道炎全体農地10.6%、淋菌クラミジア以外の原因菌のなかでは22%位を占めています。

男性尿道炎だけでなく、亀頭包皮炎の原因菌にもなるそうです。子供でよく見ますが、成人でも包茎の方、糖尿病のある方では起こすことがありますね。

分離培養は極めて困難なのだそうです。2ヶ月〜2年!かかるそうなので、臨床現場では使えませんね。

抗菌薬は、βラクタム系は効きません。マクロライド、テトラサイクリン、キノロン系はよく効いていました。これがきっかけで見つけ出されたのでしたね。
ただし耐性株が増えてきています。マクロライド耐性、キノロン耐性株です。
現在の治療は
アジスロマイシン2g
だめならシタスロシタシン
他には
アジスロマイシン1gを一回+250mg/2回/日を4日間
もしくは
ドキシサイクリン200mg/日を7日間

治療に携わることがない方だとよくわからないと思いますが、なかなか治療が難しそう、ということは伝わりませんか??

2006年にオーストラリアでマクロライド耐性株が分離されました。32株のうち9株(28%)でしたが、遺伝子変異によるもので、その場所もわかっているそうです。現在では7割にマクロライドは効かないそうです。
マクロライドって、上記のアジスロマイシンが含まれるので、今の治療のエース級が効きにくくなってきている!ってことですね。

そのオーストラリアではマクロライドに耐性があるかどうかまでわかる検査キットがあるそうです。便利すぎますね!笑
普通は検査でマイコプラズマがいる、いないしかわからないので、いるってなったときにはとりあえずマクロライドからーーーって治療方針になると思うんですけど、いるってだけでなくてマクロライドが効く、効かないってところまで分かればそのあとの治療方針も立てやすいです。

マクロライドが効かない場合はモキシフロキサシン、シタスロシタシンが使われます。
これらはキノロンと呼ばれる系統の抗菌薬ですが、、、
以下も同じキノロン系ですが
レボフロキサシンは効きません。
シプロフロキサシンもだめです。
モキシフロキサシンも耐性が進んできています。
これはキノロン系もだいぶ危うくなってきている兆候ですね。

1981年から30年弱でここまで抗菌薬耐性がついてきているということです。

日本でも高度耐性菌がでたことがあるそうです。このときはミノサイクリンとスペクチノマイシン筋注7日間で治したそうです。

もはやクラミジアの治療とは別物です。昔クラミジア治していればクラミジアでなくても治っていたというのは良き時代ですね笑

最初からシタフロキサシン?テトラサイクリン?
テトラサイクリンも耐性が進んでいるそうですし、治療困難な尿道炎の代名詞になりそうです。

ここで面白い地図を見せてもらいましたが、世界各国のクラミジア治療のファーストチョイスに使っている抗菌薬の種類で色分けしているのですが、マクロライドを最初に使っている国とマイコプラズマの耐性化の進んでいる国の色はきれいに重なるのです。
マイコプラズマの話に限りませんが、抗菌薬の使用量と耐性化には密接な関係がありますね。

日本ではまだクラミジア>マイコプラズマですが
アメリカではクラミジア=マイコプラズマになってきています。

今後の日本もそうなりそうですねーー

他の感染症ではありますが、同じ尿道炎の原因菌の淋菌にもこれまで100%効く、と言われていたセフトリアキソンに耐性の金が見つかりました。

今後は治療不可能な尿道炎に出会う可能性がある、というところで講義は終了しました。

極めて、きわめて恐ろしいお話ですね。
安易な抗菌薬使用を減らすことももちろん大事ですが、コンドームを使用したセーフセックスが重要です。
コンジローマのところでも出てきましたが、治療よりも予防!ですね。

みなさんも安全にセックスライフを楽しんでくださいね!