AGA治療方法!医学が役立つ根拠とは??

AGA

院長の太郎です。

AGAの続きです。
今回は治療方法についてです。
2017年の日本のAGA治療ガイドラインから引っ張ってきているので、現状行われている治療とはすこし推奨度がずれている部分もありますが、ドクターはこのようなガイドラインを参考に治療を行っています。

ガイドラインに載っている14種類の治療方法について、そのうち医療機関で実際に多く行われているものに関してはコメントも記載しています。

推奨度の分類
A. 行うよう強く勧める
B. 行うよう勧める
C1. 行ってもよい
C2. 行わないほうがよい
D. 行うべきではない
ただし、必ずしもこの判断基準に一致しないものがあります。この分野では国際的にもエビデンスが不足している状況です。

上記のようなガイドラインの推奨度を使用します。それでは始めます。

①フィナステリド内服 推奨度A
フィナステリドは、テストステロンをより強力なDHTに変換するⅡ型5α還元酵素に対する阻害剤
男性脱毛症に関して日本人に限定しない3927名の男性被験者を観察し、6ヶ月後、24ヶ月後ともに毛量が増加することを確認
この試験では性機能障害も上昇する傾向があった
414名の日本人を対象にした試験においても、1mg内服した群において48週間で58%が軽度以上の改善、2年、3年継続したところ68%、72%と更に改善率が上がった
別の801名の日本人の試験では5年間の1mg/日の内服で99.4%に効果
414名の日本人の観察では性機能に関する副作用はなく、胃潰瘍、大腸ポリープが出現したそれぞれ1例についても因果関係は不明
まれに肝機能障害が現れることが報告された
前立腺癌のマーカーであるPSA濃度は約50%低下する

1つ目はフィナステリド、プロペシア®と聞けばわかる方もいるのではないでしょうか。
1行目、文章がややこしいですね。

テストステロンとは男性ホルモンのことですが、5α還元酵素によってDHTに変換されるんです。そして薄毛には男性ホルモンそのものではなく、DHTが影響します。
5α還元酵素が減ると、男性ホルモンはDHTに変換されなくなり、DHTが減るために薄毛の進行が止まります。

これがフィナステリドの効果です。男性ホルモンが関わる薄毛に直接効果を出せるので女性には使えないのですが、男性には効果がかなり期待できます。

様々な臨床試験でいい結果を出していて、実際今でもAGA治療のメイン治療薬の一つです。

ここでもう一つ、前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAが下がる、とありますがどういうことでしょうか?

ここではPSAについての詳細は控えますが、PSAを採血して高い数値のときには前立腺癌の疑いがあるため精密検査を行います。ではプロペシアを内服してPSAの数値が下がった場合、前立腺の可能性が減っているのでしょうか?? 答えはいいえ、です。

例えばPSAが4.0以上のときに前立腺癌の可能性があると考えるとして、PSA5.0あった患者さんが、プロペシアを内服したら数値が半分の2.5になったからと言って癌の疑いが晴れるわけではありません。
見た目が下がって見えるだけで、実際は5.0のままなのです。慣れている泌尿器科医はプロペシアの内服歴もみながら適切な追加検査を加えてくれますので、プロペシアを内服している方は病院受診したときにはお伝えしてください。

②デュタステリド内服 推奨度A
デュタステリドは、テストステロンをDHTに変換する5α還元酵素のⅠ型・Ⅱ型両者に対する阻害剤
4950名の日本人に限らない男性で効果を認めた
日本人を含めた国際臨床試験ではデュタステリド0.5mgとフィナステリド1mgを比較し、全毛髪数や毛直径増加ではデュタステリドが優れていたが、他の評価項目を含めてもその差はわずかだったため、本当に効果に差があるかは今後の検討が必要
この国際臨床試験での副作用はとして、リビドー現象3.3%、インポテンツ5.4%、射精障害3.3%
韓国の712例の男性における平均204日の観察では、リビドー現象1.3%、インポテンツ1%、射精障害0.1%
国内120例の1年間の観察ではリビドー現象8.3%、インポテンツ11.7%、射精障害5.0%と比較的高率だったため、性機能障害については十分な説明と同意が必要
PSAは半減するので2倍した数値を目安に評価

2つ目も本命で、ザガーロ®といえば知っている方もいらっしゃいますか?
プロペシア®と似ていますが、プロペシアはⅡ型還元酵素のみ阻害するのに対して、ザガーロ®はⅠ型とⅡ型を阻害します。

2型がAGAで薄毛になる前頭部と頭頂部に多いので、プロペシア®でも効果が出ますが、一方1型も脱毛部位の毛包には含まれているので、1型がAGAに関与することも示唆されています。
効果を比較する論文は多くありますが、上記のまとめのようにややザガーロ®が優れていることを示すものがありますので、値段と効果を判断して選べば良いと思います。

デュタステリドは泌尿器科医は以前から前立腺肥大症の治療薬として使用していました。プロペシア®もそうですが、前立腺の体積を小さくする作用があるのです。
前立腺に押しつぶされて尿の勢いが若い頃と比べて弱い方が改善するのです。その頃からその治療をすると髪が増えるのは有名でしたので、効果は自覚できると思います。

③ミノキシジル外用 推奨度A
924名に2%溶液を使用し有意に毛量が増加
2%と5%溶液では5%が2%と比べて有意に毛量が増加
日本人男性300名に対して1%と5%溶液を使用したところ、5%で有意に毛量が増加
副作用としてはそう痒、紅斑、落屑、毛包炎、接触性皮膚炎、顔面の多毛があり、5%では2%と比較して出現率が高かった
成分パッチテストが行われているのは非常に少ないが、パッチテストを行った3名中2名は溶媒であるプロピレングリコールにも陽性を示した
ミノキシジル外用初期に休止期脱毛がみられ、外用中止につながる恐れがある

ミノキシジルはもともと血圧を下げる降圧剤として開発されていましたが、副作用で毛が濃くなることからAGAの治療薬として使用されるようになった経緯があります。今回の外用(塗り薬とかんがえてください)のほか、内服薬もあり、そちらは後述します。

有名なのは市販薬です。リアップ、ロゲイン、スカルプなどの名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。上記ガイドラインで使用されている5%製剤は市販薬でも選べます。医療機関の場合はより高濃度のものを使用していることがあります。もともと降圧薬だったことがあり、高濃度のものを使用する場合は医療機関で注意深く経過を見ながら使用するのがいいですね。溶媒のプロピレングリコールが皮膚炎やアレルギー反応の原因になることがあり、プロピレングリコールを使用しない製剤もあります。

④植毛法 自毛植毛法は推奨度B 人工毛植毛法は推奨度D
2015年度に世界全体で39万7千48件の自毛植毛術が行われており、そのうち男性の症例は84.7%
Beehnerは著書のなかで、82.5%以上の生着率が得られることを記載している
人工毛植毛術は多くの有害事象の報告があるため米国の食品医薬品局では事実上禁止
人工毛を用いた133名、3年間の観察でも利益が危険性を上回る根拠に乏しかった
内服・外用で十分な効果が出ない症例に限り、十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り、男性型脱毛症には自毛植毛は勧められる

現在は人工毛植毛はあまり行われていません。自毛植毛の技術がかなり進歩しているからです。
これまで見てきたとおり、AGAでは前頭部、頭頂部の薄毛がおもに起こります。耳の上や後頭部の毛はあまり薄くなりません。これはそこの毛根にはDHTの受容体がないことが影響するのですが、この毛根を薄くなっている部分に移植するのがこの治療法です。

昔のようにメスで大きく皮膚ごととってきて移植する、というわけではなく、特別なスポイト状の吸引器で毛根ごと毛を採取し、それを丁寧に1本ずつ頭頂部の毛根に植え込んで行きます。いくら髪で隠れても、大きなキズが残るのはデメリットですので、たいへんよい進化です。

薄くならない毛根が移植され、生着するとずっと生え続けます。上述の内服薬が副作用などで継続できない方には良い手段になると思います。
上記のガイドライン通り、かなりの熟練を必要とする作業ですが、高い技術で施術を受ければ効果はかなり期待できる方法です。移植できる毛根が少ない割に薄い部分が広い場合は移植できる毛根の量が少ないために、十分な効果を期待できない場合もあります。
特化した手術器具と術者を要するため当院では行いませんが、ご興味がある方には自分が見てきて素晴らしい技術があると考えている施設をご紹介いたします。

⑤LEDおよび低出力レーザー照射 推奨度B
655nm低出力レーザーを週3回当てた110名の男性を対象に、26週間観察したところ有意に毛髪量は増加
その時の副作用は4例で軽度の異常知覚と軽度の蕁麻疹
有効性には根拠があり、副作用も比較的軽微のため勧められるが、国内未認可のため用いられる光源の種類、波長、出力は報告によってさまざま

⑥アデノシンの外用 推奨度B
0.75%アデノシン配合ローションを用いた101名の観察で、80.4%に中等度の改善を示した
同じく0.75%ローションを6ヶ月間使用した38名の男性は軟毛率低下、太毛率増加、頭髪密度も増加した
0.75%アデノシン配合ローションと5%ミノキシジルローションを用いた94名の男性の比較試験ではどちらも同等の有用性があることが示唆された

⑦カルプロニウム塩化塩の外用 推奨度C1
5%カルプロニウムを用いた6名の男性を1ヶ月観察し、4名で脱毛現象あるいは発毛を認めた
10%カルプロニウム塩化物外用薬を用いた4名ではそのうち2名で脱毛抑制と軽度発毛を認めた
5%カルプロニウム塩化物外用薬を用いた5名は3ー6ヶ月で3名にやや有効な結果だった
他にも生薬などを添加したカルプロニウムを用いた観察で軽度有効な結果がでている
現段階で有用性が十分実証されていないが、長い投与実績もあるので行ってもよい

⑧t-フラバノンの外用 推奨度C1
t-フラバノン配合育毛剤を用いた14名の男性を6ヶ月間比較した試験で、新生毛の毛径平均値は約20%増大し、抜け毛数も有意に減少した
t-フラバノンと成分不明の市販育毛剤を用いた197名の比較試験では軽度以上の改善率で有意にフラバノンが優れていた
0.1%と0.3%t-フラバノン配合育毛剤を用いた77名の男性を対象にした30週間の比較試験ではプラセボと比較してフラバノン配合剤で改善率が高かった
有効性を示す弱い根拠が存在するので、外用をおこなってもよい

⑨サイトプリンおよびペンタデカンの外用 推奨度C1
0.5%サイトプリン配合育毛剤を用いた43名の男性を16週間比較し、硬毛 疎の状態・軟毛の状態の改善と脱落毛の減少を認めた
2.5%ペンタデカン酸グリセリド含有育毛剤を用いた75名の男性を24週比較した試験では、やや有効以上の有用率が高かった
有効性を示す弱い根拠があるので、外用療法を行ってもよい
⑩ケトコナゾールの外用 推奨度C1
2%ケトコナゾールシャンプーを用いた27名の男性を21ヶ月比較した試験では、15ヶ月目まで成長期毛率×毛髪直径平均値が増加し、その後プラトーになった。通常シャンプーを使用した対象群では時間とともに減少した
2%ケトコナゾール含有ローションを用いた6名の男性を10ー12ヶ月観察し、皮膚科医が6例中2例で著名な発毛を認めた
2%ケトコナゾールローションを用いた17名の男性を6ヶ月間観察し、脱毛の程度が改善した
2%ケトコナゾールシャンプーとフィナステリド内服を併用した群とフィナステリド内服のみの群を比較した10名の男性の試験では両者に差はなかった
有用性を示す弱い根拠があるので、外用をおこなってもよい

⑪かつらの着用 推奨度C1
26名の男性被験者を対象にした、かつら使用前後のアンケート調査で有意に満足度が高く、副作用はなかった
脱毛を改善するものではないが、通常の治療で改善しない場合やQOLが低下している場合には行ってもよい
⑫ビマトプロストおよびラタノプロスト外用 推奨度C2
本来、緑内障の眼圧降下目的で使用されていたが、睫毛発毛促進効果から睫毛貧毛薬としても開発された
0.1%ラタノプロストを用いた、⑯名の男性を24週間比較した試験で50%が改善、44%が変化なし、6%が悪化した。治療群の毛密度は上昇していた
広範囲に外用する場合の安全性も確保されておらず、高価で経済的負担も大きい
ヒト頭皮由来毛包の器官培養系で発毛促進効果を示したため睫毛以外にも発毛効果を示す可能性はある
現時点では十分に有用性は実証されていないので行わないほうがよい

⑬成長因子導入および細胞移植療法 推奨度C2
毛誘導能を持つ間葉系細胞の直接移植、またはその分泌物を含む培養上清からの生成物などを患部に注入し発毛促進効果を期待する治療が試みられている
いまだ先進医療の段階で、その有用性は十分に検証されているとはいえない
現時点では広く一般的に実施できるとは言い難く、行わないほうがよい

⑭ミノキシジルの内服 推奨度D
ミノキシジル内服の有用性を調べた臨床試験はは実施されていない
全身の多毛症を起こす副作用があることから使用されている
多毛症以外の副作用の報告は少なく、添付文書には胸痛・心拍数増加・動悸・息切れ・呼吸困難・うっ血性心不全・むくみや体重増加などの重大な心血管系障害が生じるとの記載あり
利益と危険性が十分に検証されていないため、行わないよう強く勧められる

ミノキシジルは③で外用薬を紹介して、推奨度Aでした。今回の内服薬は推奨度Dとされていますが、実際2020年現在においてはかなりかなり主流のAGA治療となっています。

もともとは高血圧治療の降圧薬として開発されていた薬です。副作用で、頭皮を含めて多毛になることがわかり、現在はAGAの治療薬に使用されます。
なぜミノキシジルが薄毛に効くのか、まだ明確な理由は明されておりませんが、毛根への血流改善や、毛を作る毛乳頭細胞を活性化させることで毛根の成長期を延長すると考えられています。

上述の副作用のリスクも考え、医療機関でしっかり診察を受けながら内服を続けるのが良いと思います。

以上、長くなりましたが、2017年ガイドラインのまとめを終了いたします。
AGAは医療でかなりコントロールできるようになっていますので、お気軽にご相談ください。

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