院長の太郎です。
性感染症学会、初日最初は「今更聞けない性感染症」ということで、メジャーな疾患についてのおさらいでした。
初回はクラミジア。
男性だと急性尿道炎の原因になります。尿道って名前通り膀胱から外への尿の通り道で、ペニスの部分になります。ここに炎症を起こすのはいくつか原因がありますが、このクラミジアと後述する淋菌が2大巨頭ですね。
この2つが有名すぎて、尿道炎の原因のその他は非クラミジア非淋菌性尿道炎ってひとまとめになってるくらいです笑
セックスで伝染ります。オーラルセックスでも伝染るので、挿入はコンドームを使っていたって人もオーラルで感染したりします。
感染機会から1〜2週間で尿道の違和感、排尿のときの尿道痛、透明なサラサラの膿が尿道から出てくるってのか特徴的な症状ですが、自覚症状が弱いです。気づかない人もいますし、特に女性では気づきにくいことが多いです。
そうすると気づかずに他の方とセックスしてしまい、感染が広がりますね。
実際最近では後述する梅毒がものすごく増えていることがニュースになっていますが、絶対数はクラミジアが多いため注意が必要です。
今回学会で学んだことは以下のことでした。。
性器クラミジア感染症 C.trachomatis
偏性細胞内寄生性微生物です。
宿主の細胞内で封入体という膜に包まれて身を守りながら増殖します。
クラミジア患者の絶対数はずっと横ばいです。
2018年のLANCETって有名学会誌にのった論文で、流産・早産の原因になるかを調べていました。
早産3.1% ってのは非クラミジア感染妊婦さんと変わりないそうで、この研究では影響を証明できていません。
診断には高感度核酸増幅法を使います。目的とする病原体の核酸(DNAとかRNA)を増やしまくり、その増えた核酸を調べることで目的とする病原体がいるのかどうかを正確に調べる方法です。
将来的には診断のスピードアップが重要です。
現在でもreal time PCRという方法では90分で判定できるそうです。
イギリスでは検体(尿)を出してから患者さんは電話番号をクリニックに伝えたら外出してしまいます。結果は電話で知らせているそうです。
気の短い日本人ではもっと短い時間が求められるかも、とのことでした。
迅速診断キットもあります。尿を遠心分離してから調べても20〜30分で結果がでます。海外では核酸増幅と正確さに差がないと評価されているそうですが、女性の検体はスワブで何回かに分けてこすり取るので、検体の質に差があると正確性に疑問もあるようです。
今後すぐに結果が出るようになれば、エンピリックセラピー(この病原体が疑われるときにはこの抗菌薬を使う、と決め打ちすること)がなくなり、パートナーにもしっかり伝えられるようになります。
どういうことか?
すぐに結果が出れば、実際にクラミジアがいることがわかった人にしかクラミジアの治療をすることがなくなりますので、とりあえずアジスロマイシンを処方しておく、ということがなくなります。無駄に薬を飲むことがなくなりますね。
性感染症で受診する方のなかには検査を提出してそのまま治療までして帰る(エンピリックセラピーです)方もいます。症状がなくなれば、出した検査結果を聞きに来ない方もいますので、パートナーが特定の奥さん・彼女じゃなかったら伝えずにうやむやにしてしまう場合もありえます。そのパートナーの女性は自覚症状に乏しいのでずっと治療せず、気づいたときには頸管炎を起こしていて不妊症になってしまったり!することもあるのです。受診時にクラミジアがある、と診断できるようになれば、パートナーにも伝えるようにしっかり指導もできるようになりますね。
薬剤感受性(抗菌薬の効果)は良好です。今、クラミジア治療の第一選択にはアジスロマイシン(ジスロマック®)という内服薬を使用しますが、国内では耐性菌は認めていません。
フランスでわざとアジスロマイシンを少なめに投与することを続けながら、アジスロマイシンの効かないクラミジアを作った、という報告があるそうですが、1年位かかったそうです。かんたんには耐性化しないということですね。
現在の日本で罹ったクラミジアは必ず治せる、ということです。
それでは我々がクラミジアを治療する時に、アジスロマイシンをつかってもなかなか陰性にならないことがあるのですがこれはなんなのか?ということですが。。。
繰り返す性器クラミジアは薬の効かない持続感染なのか?それとも治っては罹っての繰り返しになっているのか?を調べた論文が2015年に出ているそうです。
繰り返すクラミジアの遺伝子配列を調べたところ、ほとんどが一致しなかったそうです。別のクラミジアにその都度罹っていた、ということですね。
すごく性的にアクティブ!な患者さんってことでしょうか笑
つまり、アジスロマイシンが効かないクラミジアがいるってわけではないので、演者の先生はクラミジアが原因菌とわかっている場合は毎回アジスロマイシンを使用して良いとおっしゃっていました。
これは検査でクラミジアが原因とわかっている場合に限ります。
この時間に学んだことは以上です。クラミジアとわかっていても尿道炎が治らないとき、ブレオマイシンに変更したりしていましたが、自信をもってアジスロマイシンを再処方できるようになりました笑
急性尿道炎はクラミジアのみが原因菌ではないので、治療もそれほど単純な話ではないです。
今回は最後の遺伝子配列の論文の話が一番印象に残りました。
次回は性器ヘルペスについてです。